研究仮説についての成果と課題
(協力員の実践まとめと研究発表大会交流より)
【研究仮説】
(1)身に付けた知識及び技能を活用・発揮する場面を単元構想の中で意図
的に設定することで、単元の資質・能力が構造化され、「主体的・対
話的で深い学び」を達成する授業改善が実現できるであろう。
(2)単元を見通したパフォーマンス課題を設定し、ルーブリックの作成と
提示をすることによって「思考・判断・表現」「主体的に取り組む態
度」を適切に評価することができるだろう。
キーワード:意図的な単元計画/評価計画/自己調整力/ルーブリック/
パフィーマンス課題
○成 果
〇パフォーマンス課題を設定することで具体的に単元で目指す姿がイメージでき、そのためにどのようなかかわりができるかがはっきりしたことで導入しやすく感じた。また、子どもたちは自分事としてとらえながら学習を進めることができていた。
〇単元ゴールを意識したパフォーマンス課題の設定は難易度と自分の理解度とを照らし合わせて取り組むことで、結果的に自己調整につながるものになった。
〇ルーブリックを提示したことは、子どもの意識付けに効果的で、自分の学びを調整したり高めようとしたりする姿が随所に見られた。
〇見通す場面を子どもとの対話の中から進めたことで、その後の活動への意欲や安心感を持って課題に向かうことができていた。
〇パフォーマンス課題を設定していくことで、ゴールの姿を明確にイメージすることができ、学びの必要感が高まった。
〇ルーブリックを提示することで、子どもたちに授業への見通しを持たせることができた。
〇単元の始めにパフォーマンス課題とルーブリックを共有したことで、授業者は単元の中で何を大切にしたら良いかを意識でき、生徒は学習意欲を高めながら単元ゴールに向け意欲を継続することができていた。
▲気づきや課題
●所員・協力員共にパフォーマンス課題、ルーブリックの共通理解が不十分であった。理論、実践例をしっかり提示し理解を得られた上で指導案作成できるとよい。
●教科や活動の特性上、ルーブリックを示すことが効果的ではない場合もあるのではないか。(「評価のために努力する子」になってしまうのではないか。)
●自己調整を見取ることにおいて、“はじめとどのように変化させたか”を言語化させることも効果的であると感じた。
●ルーブリックによって子どもの発想を狭めてしまう危惧があるため、細分化して効果的に活用をする。
●ルーブリックは児童の実態に合わせて3段階にこだわらず、提示方法は生徒に伝えるためにどのような言葉を使えばよいか研究が必要に感じた。
●年間の授業の中で単元に合わせることに加え、言語活動のバランスも考えルーブリックを適切に活用してくと子どもを多面的・多角的に見取ることが必要であると感じた。
●子どもと評到達度を共有しているからこそ、授業中の机間指導のかかわりや、声掛けが大切になってくると感じた。
●協力員の授業公開後に気になることや気付きを書面でよいので伝えることで、授業をふりかえる視点となる。
●研究分野は、日高管内の課題を明らかにしながら実態に応じた課題解決の実践例を情報提供するなど研修センターの機能の充実を図る。
まとめ
① 昨年度からの積み重ねから,単元計画の位置づけや主体的に学習に取り組む態度を単元の中でどのようにデザインしていくのかについての理解が深まったが,成果は不十分である。それと同時に,一単位時間だけの計画ではなく単元の目標・評価・指導計画の重要度を高めることで,これまでの学びや単元の中で得た「知識・技能」をどの場面で活用し言語活動に繋げていくのかを授業者が意図してデザインすることの重要性を感じている。
② 今年度はパフォーマンス課題とルーブリックについて理論学習を行いながら協力員の先生方と学びを共有することができたが,実践に活かすには及ばず共通理解が不十分な点があった。上記の成果にもあるように“パフォーマンス課題”“見通し”“ゴール姿をイメージ”“意欲”“自己調整”の観点から,育成を目指す資質・能力を柱として指導計画を作成し、最後まで目的からぶれないで指導することを軸に授業改善を図っていく必要がある。
③ 今年度の研究発表大会に参加された先生方からは,到達度や評価を子どもと共有する大切さや必要性について実感する声も多数聞くことができた。一方,「どのような記述が良いのか」や「どんな場面で活用ができるのか」「ルーブリック作成で工夫できることはないだろうか」など,ステップアップへの課題点も見えてきた。教科の視点を盛り込み,学びを調整する側面だけではなく学びの質を高めるものにするため,今後も理論や実践を重ねて研究をしていく必要があると感じた。
④ 次年度では,今年度の成果や気付き・課題やこれまでの積み重ねを活かした上で「パフォーマンス課題を設定した単元デザイン」「ルーブリックの効果的な活用」をキーワードに,以下のように方向性を示していきたい。
⑤「主体的・対話的で深い学び」とはどのような姿を指すのかを具体的におさえること,今年度の課題にあったパフォーマンス課題・ルーブリックの理論,定義の共通理解を徹底することを重点に授業改善を行う。また,次年度以降も時代の変化や日高管内の実態に合わせながら〇ヵ年計画のようなシステムをとるのではなく,“今必要な(大切な)学びや授業改善”を意識して研究を推進していきたいと考えている。